たくさん映画を見てきた中で、とりあえずおすすめするならば、この映画です!
この映画に出会ったときというのは、自分はこんな状態でした…
朝5時半、始発の電車に乗り、1時間強かけて会社へ。
昼の1時間休憩も、10分で終わらせて、再び業務へ。
夜は11時過ぎ、終電に飛び乗り帰宅。
家に着くのは12時半。そこから晩御飯と入浴を済ませると、だいたい2時過ぎになってました。
翌日はまた、5時半の電車に乗らないといけないので、4時半には起床するという・・・
しかも、たまに徹夜して、会社に泊まって翌朝帰宅するという 、今考えると、よくやっていたなぁと思う生活でした。
単純にそれが辛いとかではなく、ただひたすらに没頭するというような状態でした。
一方で、そうせざるを得ない、何か見えない力に縛られていた、という感覚もありました。

責任?
強制?
充実?
やりがい?
・・・いえ、こういう単純な語句では説明できない感覚です。
B’zの稲葉浩志さんが、ソロ活動の時に出した「OVER DRIVE」という曲があるのですが、この曲の歌詞が結構この状態に近いのではないかと、勝手に思ってます。
『毎日毎日割に合わない疲労
全くこの世は蟻地獄
それでも頭の中は高速で回ってら
案外嫌いじゃない』
そう、まさに蟻地獄なんです。
ここを乗り切れば!と、限界までトップスピードで突っ走る。
乗り切ったと感じた瞬間に、その感覚は消え失せている…
サラサラの砂の中を、上を目指してもがき続けるのだけれど、一向に上に到達しない…
だけど、ここで、もがくのをやめてしまうと…
疲労困憊の限界状態を、トップスピードで走り続ける全力感に酔う形で、続けていけれてしまう。
そんな感じでしょうか。
ただ、やはり、こんな状態を10年…12年と続けていくと、限界がくるわけです…

次の日が出張だったので、早く帰らなければと思いつつ、結局いつもの通りのコースで帰宅。
2時間程度の睡眠で、車を運転して高速を突っ走り、スタジオ入りして休む間もなく撮影。
スタッフやモデルに気を配りながら、5時過ぎまで動き回る。
宿泊先のビジネスホテルに着き、部屋に入って座った瞬間、スイッチがOFFになる音を聞いた気がしました。

今考えると、この状態、結構危なかったなぁと思います。
まだ、何かしようとする気力が残っていたのはラッキーでした。
ホテルの部屋でテレビのスイッチを入れた時、そういえば映画も見れるんだ…学生の頃、好きでよく見たよなぁ…久しぶりに見てみるか…
バリバリアクションのTHEハリウッド映画っていう気分でもないし、サスペンス、ホラー、そんな気分でもない…
結局見たいものないなぁ…と思いつつ、1つだけ『はじまりのうた』という映画が引っかかっていました。
最初は『はじまりのうた』っていうタイトルが、なんだかいい映画とは思えなくて結構迷ったのですが、原題の『BEGIN AGAIN』 という響きにひかれて、見ることにしました。
これが正解でした。
THEポジティブ!な映画や本って、こういう時、「あぁ自分はポジティブになれなくって、ダメだなぁ…」なんて、逆効果になりがちなんですが、この映画は、静かに、でも確実に、次の一歩を踏み出してみようとする力が、じわじわ湧いてくる…そんな映画でした。
キーラ・ナイトレイ演ずるグレタが、自転車で走っていく最後のシーンも秀逸ですが、冒頭のライブハウスで歌う場面も心に染みる名シーンです。
マーク・ラファロ演ずるダンが、グレタの歌う姿を見ているときに、音楽が変化していく様は、心の奥底から感動したのを覚えています。
音楽って本当にいいなって再認識できる映画であることも間違いないです。
この映画に出会う前、自分の中では「ショーシャンクの空に」が、BEST1でした。
本当に、心の底からスカッとするショーシャンクは、大好きな映画で、どちらがいいかと甲乙つける問題でもないです。
ただ、説明するのさえ難しい、このどうしようもない、燃え尽きてしまった心理状態に陥ってしまっていたら、迷わずこの『はじまりのうた』をおすすめします。
わずかに火をともし、映画を見終わるころには、それがしっかりとした火種になっていることを感じられる。そんな映画です。
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